月別アーカイブ  [ 2014年06月 ] 

におい

こどもたちがいなくても、幼稚園はこどものにおいがします。
ちょっと甘いような、あたたかいにおいです。
いつまでもこの場所がこどものにおいに包まれる場所であって欲しいと思います。

木曜日、登園してきたこどもたちから、両手で握り締めたたくさんのねこじゃらしをもらいました。
「ありがとう!」、と受け取ってから鼻を近づけて匂ってみると、こどものにおいだ・・・・
こどものにおいは、草のにおいと気づきました。
そういえば、先日庭の花壇を占領していたどくだみ草をひっこぬいて、
「これ、におってごらん。」、と小さな鼻にいたずらっぽく近づけてみると、
「くさーーい!」と言うと思っていたのに、「いいにおい。」と言ったのにちょっと驚いたことがありました。
自然が放つほのかな香りは、こどもたちを心地よく包んでいて、
その中で育つこどもたちは、しあわせなこどもたちと言えると思います。
土のにおい、砂のにおい、木のにおい、虫のにおい、草のにおい、汗のにおい、おしっこのにおい・・・・・
一緒に生活しているからこそ、一緒にあそんでいるからこそ、みんなで息をして、みんなで嗅ぐにおい。
それが、『ひとりではない』という実感と記憶となり、安定した情緒を育てると思います。
そして、においの記憶は強いですから、大きくなってどろんこあそびを卒業した後も、
土のにおいに触れて、あの楽しかったこども時代を思い出して、元気になれたりします。

こどもたちのポケットの中が、自然のにおいでいっぱいになるような幼稚園であり続けたいです。
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[ 2014/06/28 13:33 ] 保育 | TB(-) | CM(-)

びょういんやさん

保育参観のご感想から、
この小さな園庭でも、こどもたちは見事に点在し、それぞれの遊びを展開していたことを
お母さんがたに実感していただけたよう。
そこには、保育者の『環境設定』という、表面的には気づかれないかもしれないけど、
見通しと配慮による『保育』が繰り広げられていたのです。

鉄棒があるからといって、必ず前まわりとか、逆上がりとかを練習しているとは限らず、
鉄棒の下の砂を手で撫でてみたら、ピカピカの硬い地面が出てくることに気づいたこうやくん。
「ほら、これみて。」「すごい!」「わーーー!」・・・・・・
ひとり、ふたりと興味を持った人たちが集まってくる中、
わたしも一緒になって、砂を手の平で押しのけ、硬い地面をパンパンとたたくと、
貴重なサラ粉が少しずつ浮き上がってきたのでした。
それを黙ってあつめはじめたりんちゃん。
このサラ粉を宝物のように大切に使って、ぴかぴかだんごを作るのでした。
どんどん地面は黒くひかる鉄板のようになっていきました。
こうなると、鉄棒ではなく、地面があそびの『舞台』
わたしたちは、その『舞台』を『環境』として、あそびが展開するように配慮しながら見守ります。
小さな園庭で、パズルのようにそれぞれのあそびが秩序をもって、しかも豊かに繰り広げられているとしたら、
そこには、保育者の『環境設定』と、お互いを思いやる気持ちが、目に見えない柔軟な枠を作っていると思ってください。

さて、園庭は一望できるので、動きを全体的に見るようにしたり、近寄ってこどもたちの会話に耳を傾けたりして、
そこここで何が繰り広げられているのかを把握しながら、それぞれのドラマを感じることができるのですが、
室内はお部屋が区切られているし、お庭以上に狭いので、
どこでどんな遊びが繰り広げられるかを予想し、設定することがとても大切です。
そしてそれ以上に、こどもたちの自由な心の動きに呼応して、
保育者が即興で環境を整えてあげることがもっと大切だと思っています。

いつものようにぬいぐるみのねずみちゃんを大事そうに抱っこして、どこか寂しそうに近づいてきたむーちゃん。
「どうしました?はい、ここにねてください。・・・・ああ、かぜをひいていますね。」
途端にむーちゃんの顔が緩んできました。
「えーーっと、おくすりをだしましょうね。ごはんのあとにのんでください。」
そう言って、職員室からいらない紙と封筒をかごに入れて、ももぐみの机の上に置いてみました。
すると、「びょういんやさんする!」と言いながら、むーちゃんは黙々と紙をちぎってお薬に見立て、
封筒に入れる遊びを始めたのでした。
こうして、『びょういんやさん』がももぐみの前のろうかで始まり、
ベッドに見立てた椅子に、ドレスを着たたーちゃんが、いかにも具合の悪そうな顔をして横たわりました。
「どれどれ、みせてください。・・・・ははあ・・・・・かぜですね。・・・たいおんをはかりましょう。ちゅうしゃをしましょう。」
『かんじゃさん』は、とても素直に従うので、診察はとてもスムーズに進みます。
でもたーちゃんは、「まだなおりません、」と言って、ずっとベッドの上にいました。
そうしながら、わたしは紙を丸めて線を描いて『たいおんけい』や『ちゅうしゃき』を作っていきました。
きせちゃんもここちゃんもともきくんもあきくんも・・・・
素直な『かんじゃさん』、優しい『びょういんやさん』に同時になりながら、平和に遊びました。
これぞ平行遊び!
自分の興味のあることを自分のペースで楽しんでいます。
でも、保育者がいることで、同じ場面を共有でき、お互いの存在が刺激となっているのは確かです。
結局、この遊びの発端となったむーちゃんは、最後までせっせとお薬を作り続け、
わたしが作ってあげた注射器といっしょにセットにして、自分のロッカーに納めていました。
そして帰り際に、「むーちゃんとなおこせんせいは、あしたびょういんごっこをします、てかいておいてね」
とわたしに頼んで笑顔で帰りました。

さて翌日。
もちろん、むーちゃんに頼まれていたメモは、わたしの机の前に貼っていましたが、
あえて、こちらからは本人をあそびに誘いませんでした。
いくら昨日の約束があったとしても、今日は今日のむーちゃんの都合があるからです。
もしも、手持ち無沙汰な様子が見られたら、こちらから声をかけるのですが、
むーちゃんはすでに新しい遊びをみつけていましたので。
それはそれとして、お弁当の後、ももさんたちが職員室にいたわたしを遊びに誘い始めました。
「これたべてください。」「くーちゃんがおかあさんだよ。」「ああ、だめえ!」「うううううう。」「いってきます。」
見事な平行遊び。
それぞれにおうちごっこをしているのだろうけど、このままいくと、おもちゃを取った取られたで、遊びはつながらない・・・・
そこで・・・「どうしました?ああ、けがですか・・・おくすりをつけましょう。」
そう!『びょういんやさんごっこ』!
じきに職員室の前のろうかと、玄関に座り込んで、おくすりや注射器づくりが始まりました。
そこでとなりのさくらぐみのお部屋にお引越し。
いすや机、紙・えんぴつ・セロハンテープ・スズランテープを準備して・・・・・
昨日、カゼの治らない患者さんをしていたたーちゃんは、優しいお医者さんになって、
くーちゃんに抱かれてきたケガをしたミニーちゃんにスズランテープの包帯をまいてあげていました。
ほどなくして通りかかったむーちゃんも、「ああ、そうだったじゃない!」と言いながら、
昨日の病院セットを持ち出して、合流しました。
わたしは、注射器を作ったり、聴診器を作ったりしながら、セロハンテープやえんぴつの使い方を援助し、
そして、時々『治療』をしたのですが、
少しずつ、こどもたち同士で役に分かれて『びょういんやさん』を展開していっているのを感じました。

新学期が始まってまだ2ヶ月。
わたしたちは、あっちこっちに出没しながら、こどもたちの間であそびを援助しています。
この援助の形を少しずつ変化させながら、こどもたちの世界が豊かに成熟するのを見守りたいと思います。





[ 2014/06/09 11:59 ] 保育 | TB(-) | CM(-)